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11〜20座目

爆風 利尻山の旅

道北の独立峰に登る

特徴・気候

リシリヒナゲシ
リシリアザミ
ボタンキンバイ

旅のチェックポイント

登山録

1st day (4/27)

海上から利尻山を望む

1日目の行程

羽田空港→稚内空港→フェリーターミナル→鴛泊港→ぐりーんひる

1日目の行程

羽田空港→稚内空港→フェリーターミナル→鴛泊港→ぐりーんひる
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道道105号を反時計回りに10分進むとぐりーんひるに着いた。昭和60年に開業したこの宿は、現在セルフキッチン付きのゲストハウスとして営業している。用意して頂いた個室「オリオン」は2段ベットが4台の8人用室で、中央にテーブルが配置されたシンプルな設えだ。贅沢にも1人づつ2段ベットを占領して、窓から海を眺めながら一息ついた。海面は穏やかだが風がピューピュー吹いている。宿のスタッフに聞いたところ、利尻島は「海上の島」という特性から常に風速10m/s程度の風が吹くという。(※風速10m/sは強風警報の目安となる数値)今日、たまたま風が強い訳では無かったのだ。

利尻の風を考察する

2nd day(4/28)

2日目の行程(登り)

ぐりーんひる→鴛泊登山口→第一見晴台→長官山→避難小屋→山頂

2日目の行程(登り)

ぐりーんひる→鴛泊登山口→第一見晴台→長官山→避難小屋→山頂
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第二見晴台

視界の回復がないまま、斜面を進む。ピッケルは根本まで突き刺さるので完全には固まってはいないが、雪の表面は固く、アイゼンを効かせながら進めた。利尻山は独立峰である以上、とにかく登って行けば山頂に近づくことになる。この方向で合っているのか心配になり地図を眺めていると、モヤの中から誰か下山してきた。「先輩方」だ。さすがの鮮やかさに驚いたが、話を聞くと「9合目」で折り返してきたそうだ。「雪山は登った道こそが登山道。このまま真っ直ぐ進めばいい。それより、ここから先は爆風だよ。頑張ってね」と、バトンを渡して2人はさっそうとモヤのなかを行ってしまった。

視界の回復がないまま、斜面を進む。ピッケルは根本まで突き刺さるので完全には固まってはいないが、雪の表面は固く、アイゼンを効かせながら進めた。利尻山は独立峰である以上、とにかく登って行けば山頂に近づくことになる。この方向で合っているのか心配になり地図を眺めていると、モヤの中から誰か下山してきた。「先輩方」だ。さすがの鮮やかさに驚いたが、話を聞くと「9合目」で折り返してきたそうだ。「雪山は登った道こそが登山道。このまま真っ直ぐ進めばいい。それより、ここから先は爆風だよ。頑張ってね」と、バトンを渡して2人はさっそうとモヤのなかを行ってしまった。

斜面を登り切ると、視界は回復して進む方向はハッキリしたが、今度は立っていられないほどの強風が西側から吹き荒れていて、とにかく夢中で進んだ。雪はバチバチとカッパを鳴らし、強風が耳穴の奥まで届いて痛い。雲はものすごい勢いで流れて行くと、空だけが早送りで再生されているような不思議な光景だった。曇り空は更に加速を増して、2・3度青空が見えたかと思うと一気に晴れ渡り、太陽が利尻山を照らした。9合目に辿り着くと、鋭利に尖る利尻の峰が晴天の空を指していて、この日初めて山頂と対面することが出来た。

斜面を登り切ると、視界は回復して進む方向はハッキリしたが、今度は立っていられないほどの強風が西側から吹き荒れていて、とにかく夢中で進んだ。雪はバチバチとカッパを鳴らし、強風が耳穴の奥まで届いて痛い。雲はものすごい勢いで流れて行くと、空だけが早送りで再生されているような不思議な光景だった。曇り空は更に加速を増して、2・3度青空が見えたかと思うと一気に晴れ渡り、太陽が利尻山を照らした。9合目に辿り着くと、鋭利に尖る利尻の峰が晴天の空を指していて、この日初めて山頂と対面することが出来た。

北峰とローソク岩

2日目の行程(下り)

山頂→避難小屋→長官山→第一見晴台→鴛泊登山口

2日目の行程(下り)

山頂→避難小屋→長官山→第一見晴台→鴛泊登山口
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これから鴛泊登山口まで戻る事になる。悪天候の中、勢いで山頂まで来たのはいいが、いざ登って来た分を同じく下るのは、道のりが長いのが分かっていて、日のある内に下山できるか心配になってきた。すると山頂まで着いて気が緩んでしまったのか、20mほど歩いた所で平原さんがうずくまり身動きが取れなくなってしまう。さっきまで素晴らしかった麓の景色が、今度は果てしなく遠くて、なんだか目眩(めまい)がしてきた。チョコレートを食べて気持ちを持ち直すと「とにかく避難小屋まで戻りましょう」とハッパをかけた。雪稜の登山道は下りの方が急勾配に感じてしまい斜面に吸い込まれないように、尻もちを付いたまま雪をズリズリと下る。

これから鴛泊登山口まで戻る事になる。悪天候の中、勢いで山頂まで来たのはいいが、いざ登って来た分を同じく下るのは、道のりが長いのが分かっていて、日のある内に下山できるか心配になってきた。すると山頂まで着いて気が緩んでしまったのか、20mほど歩いた所で平原さんがうずくまり身動きが取れなくなってしまう。さっきまで素晴らしかった麓の景色が、今度は果てしなく遠くて、なんだか目眩(めまい)がしてきた。チョコレートを食べて気持ちを持ち直すと「とにかく避難小屋まで戻りましょう」とハッパをかけた。雪稜の登山道は下りの方が急勾配に感じてしまい斜面に吸い込まれないように、尻もちを付いたまま雪をズリズリと下る。

9合目を通り過ぎる。天気が回復したせいか、風もだいぶ弱まってきた。午後の日差しが温かくて気持ち良い。もう登りの時の緊張感は無くて、まるで別の山のようだ。登りでは気づかなかったが、この辺りは特に登山道の劣化が激しく、コルゲート管に流出したスコリアを敷き詰めて土留めを作り、自然のまま補修している。利尻山はほんの数年前まで、脆く崩れやすい登山道の侵食が深刻になっていて、登っては崩れる「3歩進んで2歩下がる」山だと言われていた。保全活動は今も続いていて、利尻山に登れる事を感謝したい。

9合目を通り過ぎる。天気が回復したせいか、風もだいぶ弱まってきた。午後の日差しが温かくて気持ち良い。もう登りの時の緊張感は無くて、まるで別の山のようだ。登りでは気づかなかったが、この辺りは特に登山道の劣化が激しく、コルゲート管に流出したスコリアを敷き詰めて土留めを作り、自然のまま補修している。利尻山はほんの数年前まで、脆く崩れやすい登山道の侵食が深刻になっていて、登っては崩れる「3歩進んで2歩下がる」山だと言われていた。保全活動は今も続いていて、利尻山に登れる事を感謝したい

海を眺めながら雪の斜面を下って行くと避難小屋に帰って来た。登山者が1組陣取っているところで、今日は小屋で一泊して明日山頂へ向かうらしい。ここから登山口まで約2時間30分ほど。持ち水も残り少なくなってきたが、登山口まで水場はない。パンとコーヒーで体力を回復した後、午後15時30分頃、下山を再開する。登りでは山頂と初対面するはずだった8合目長官山に着いて、登山道を振り返ると、真っ白な雪の尾根が広がり、山頂とこれまで降ってきた軌跡が確認できた。アイゼンピッケルを仕舞う。順調に下るも、最後まで残雪に足を取られながらの登山道だった。夕日が沈み、ヘッドライトを頼りに樹林帯を進むと午後19時頃、無事鴛泊登山口に辿り着いた。約13時間に及ぶ、長い道のりだった。

8合目 長官山から山頂を望む

3rd day(4/29)

最終日の朝。利尻島は晴天で、今日は風も珍しく穏やかだ。昨日は、ダイニングを貸し切ってジンギスカンビールで盛り上がった。今回の利尻山は天気の悪さと利尻の風が登山道を険しくしたが、その分忘れられない残雪の登山旅になったと思う。それから宿には空港まで送迎して頂き、最後までお世話になった。実はぐりーんひるで我々は「利尻の鉄人」宣言を表明した。鉄人の条件は2つ。「利尻山踏破」と「利尻島一周」である。宣言したからにはいつか挑戦したい。日本航空のプロペラ機は利尻空港から札幌の丘珠空港(おかだまくうこう)へ離陸を開始すると、上昇・旋回して進路を整える。進行方向右側の窓席から、残雪の利尻山を見納めた。

最終日の朝。利尻島は晴天で、今日は風も珍しく穏やかだ。昨日は、ダイニングを貸し切ってジンギスカンビールで盛り上がった。今回の利尻山は天気の悪さと利尻の風が登山道を険しくしたが、その分忘れられない残雪の登山旅になったと思う。それから宿には空港まで送迎して頂き、最後までお世話になった。実はぐりーんひるで我々は「利尻の鉄人」宣言を表明した。鉄人の条件は2つ。「利尻山踏破」と「利尻島一周」である。宣言したからにはいつか挑戦したい。日本航空のプロペラ機は利尻空港から札幌の丘珠空港(おかだまくうこう)へ離陸を開始すると、上昇・旋回して進路を整える。進行方向右側の窓席から、残雪の利尻山を見納めた。