道北の独立峰に登る
利尻山の旅。15座目は北海道・道北(どうほく)の日本海に位置する利尻山(りしりざん)に行って来ました。利尻島や隣接する礼文島(れぶんとう)を始め、宗谷地区(そうやちく)の稚内市(わっかないし)から豊富町(とよとみちょう)・幌延町(ほろのべまち)にかけての西海岸線一帯と、サロベツ原野(げんや)を含めた「利尻礼文サロベツ国立公園」に指定された日本最北端の百名山である。
利尻山の旅。15座目は北海道・道北(どうほく)の日本海に位置する利尻山(りしりざん)に行って来ました。利尻島や隣接する礼文島(れぶんとう)を始め、宗谷地区(そうやちく)の稚内市(わっかないし)から豊富町(とよとみちょう)・幌延町(ほろのべまち)にかけての西海岸線一帯と、サロベツ原野(げんや)を含めた「利尻礼文サロベツ国立公園」に指定された日本最北端の百名山である。

特徴・気候
利尻山は約20万年前の火山活動によって成層火山が生まれ、円錐型(えんすいがた)の孤島に成長した。海上から吹く雨風と雪による凍結融解作用(とうけつゆうかいさよう)によって、麓(ふもと)に広がる裾野(すその)だけが当時の円錐型を残したまま、今の形に落ち着いた。海に浮かぶ姿は類を見ない珍しい眺めだ。島の語源はアイヌ語の「リイシリ」。「リイ」は高い、「シリ」が島という意味で、高い山の島を指す。その昔、アイヌの人々は登ってはならない信仰の山として、また漁師たちは航海のランドマークとして利尻山を崇めてきた。


利尻山は約20万年前の火山活動によって成層火山が生まれ、円錐型(えんすいがた)の孤島に成長した。海上から吹く雨風と雪による凍結融解作用(とうけつゆうかいさよう)によって、麓(ふもと)に広がる裾野(すその)だけが当時の円錐型を残したまま、今の形に落ち着いた。海に浮かぶ姿は類を見ない珍しい眺めだ。島の語源はアイヌ語の「リイシリ」。「リイ」は高い、「シリ」が島という意味で、高い山の島を指す。その昔、アイヌの人々は登ってはならない信仰の山として、また漁師たちは航海のランドマークとして利尻山を崇めてきた。
花の利尻山






海上の孤島という特性が、自然を隔離する事で利尻特有の植物を生み出した。利尻の固有種はリシリヒナゲシ、リシリアザミ、ボタンキンバイの3種。特にリシリヒナゲシは唯一日本に自生するケシ科の花である。登山適期の6月から8月にかけて花が咲き誇り、花の利尻山は登山者で最盛期を迎える。
海上の孤島という特性が、自然を隔離する事で利尻特有の植物を生み出した。利尻の固有種はリシリヒナゲシ、リシリアザミ、ボタンキンバイの3種。特にリシリヒナゲシは唯一日本に自生するケシ科の花である。登山適期の6月から8月にかけて花が咲き誇り、花の利尻山は登山者で最盛期を迎える。


利尻山の標高は1721m。ただし、北海道の登山環境は本州の山3000m級と考えていい。また、登山道は1500mの高低差に加えて登山時間も9時間と長く、踏破するには体力と時間に十分余裕を持って臨みたい。(※8号目の避難小屋を利用して2日に分けて登る事も可能だ)離島という元々隔離された環境から、利尻島にはシカやキツネなどの大型の哺乳類(ほにゅうるい)や爬虫類(はちゅうるい)は生息していないので、登山中にクマに襲われたり湧水飲用によるエキノコックス感染の心配はない。利尻山は春になっても多くの雪が残り、近年バックカントリーを楽しむ登山者も多い。2024年の3月にはバックカントリーツアー中の8人のうち4人が雪崩に巻き込まれる大事故があった。残雪期は、急な天候の変化による雪崩や遭難には注意を要する。今回我々が登ったのは、登山適期から外れた4月末のゴールデンウィーク。本州の残雪登山経験はあるものの、春の北海道登山は初めてだ。アイゼンとピッケルを用意して、残雪の利尻山に向かった。
利尻山の標高は1721m。ただし、北海道の登山環境は本州の山3000m級と考えていい。また、登山道は1500mの高低差に加えて登山時間も9時間と長く、踏破するには体力と時間に十分余裕を持って臨みたい。(※8号目の避難小屋を利用して2日に分けて登る事も可能だ)離島という元々隔離された環境から、利尻島にはシカやキツネなどの大型の哺乳類(ほにゅうるい)や爬虫類(はちゅうるい)は生息していないので、登山中にクマに襲われたり湧水飲用によるエキノコックス感染の心配はない。利尻山は春になっても多くの雪が残り、近年バックカントリーを楽しむ登山者も多い。2024年の3月にはバックカントリーツアー中の8人のうち4人が雪崩に巻き込まれる大事故があった。残雪期は、急な天候の変化による雪崩や遭難には注意を要する。今回我々が登ったのは、登山適期から外れた4月末のゴールデンウィーク。本州の残雪登山経験はあるものの、春の北海道登山は初めてだ。アイゼンとピッケルを用意して、残雪の利尻山に向かった。

旅のチェックポイント
利尻島へのアクセスは飛行機とフェリーの2つ。今旅は羽田発の稚内直行便で稚内フェリーターミナルから利尻島に上陸し、帰りは利尻空港から丘珠空港(おかだまくうこう)を経由することで、海と空から利尻山を眺める、2泊3日での日程を組んだ。
・登山口まて送迎対応している宿も多い。ただし下山時はタクシーを呼ぶ事になる為、事前に連絡先の確認が必要。
・島内はコンビニやホームセンターが営業中で買い出しや、バーナーのガスボンベも購入できる。
・日程に余裕があれば、利尻の鉄人、超人にぜひ挑んでいただきたい。
利尻島へのアクセスは飛行機とフェリーの2つ。今旅は羽田発の稚内直行便で稚内フェリーターミナルから利尻島に上陸し、帰りは利尻空港から丘珠空港(おかだまくうこう)を経由することで、海と空から利尻山を眺める、2泊3日での日程を組んだ。
・登山口まて送迎対応している宿も多い。ただし下山時はタクシーを呼ぶ事になる為、事前に連絡先の確認が必要。
・島内はコンビニやホームセンターが営業中で買い出しや、バーナーのガスボンベも購入できる。
・日程に余裕があれば、利尻の鉄人、超人にぜひ挑んでいただきたい。
登山録
1st day (4/27)
羽田空港発の稚内行き航空機はゴールデンウィークの影響を受けて、30分も遅れてようやく飛び立った。北海道の雪掛かった大地を窓から見下ろしながら過ごしていると、稚内空港へ着陸体制に入る。道北の宗谷地区は、海に面していてどこまでも海岸線が続いていた。ここ北海道稚内市は北方領土(ほっぽうりょうど)を除く日本最北端の地である。到着後、手荷物発着所へ向かうと相馬さんと平原さんが待っていた。挨拶も早々に、レンタカーでフェリーターミナルへ急ぐ。出発時刻15分前の午後13時40分、なんとか無事フェリーへ乗り込んだ。目的地の利尻島まで、約100分の船旅になる。


羽田空港発の稚内行き航空機はゴールデンウィークの影響を受けて、30分も遅れてようやく飛び立った。北海道の雪掛かった大地を窓から見下ろしながら過ごしていると、稚内空港へ着陸体制に入る。道北の宗谷地区は、海に面していてどこまでも海岸線が続いていた。ここ北海道稚内市は北方領土(ほっぽうりょうど)を除く日本最北端の地である。到着後、手荷物発着所へ向かうと相馬さんと平原さんが待っていた。挨拶も早々に、レンタカーでフェリーターミナルへ急ぐ。出発時刻15分前の午後13時40分、なんとか無事フェリーへ乗り込んだ。目的地の利尻島まで、約100分の船旅になる。




「5月の旭川空港行きが安い」と言う理由からゴールデンウィークの登山旅は、北海道に決めた。道央(どうおう)の大雪山(だいせつざん)を調べていくうちに旭岳(あさひだけ)・トムラウシ山をつなぐ縦走路に惹かれ、提案するも日程が合わず断念する。縦走するには移動を含めて最低でも3泊4日は必要だった。今回はステップアップとして、ピッケルが必要な残雪登山に行こうと目標を掲げていた。東北の山や南アルプス、中央アルプスなど残雪登山の代替案を検討してみたが、すでに「北海道の口」になっていてどうもしっくり来ない。皆の日にちが合う2泊3日で、踏破可能な北海道の山。それならば、兼ねてから計画のあった利尻山はどうだろうか。4年前の2020年の夏、利尻島行きの計画は新型コロナウイルスによる自粛の影響で羽田・稚内直行便は欠便を余儀なくされ、宙ぶらりんになったままだ。利尻富士町(りしりふじちょう)観光課へ問い合わせたところ、4月下旬の利尻山には「アイゼン・ピッケルが不可欠です」と解答を頂いた。日本最北端の百名山「利尻山」へ向かう事にした。
「5月の旭川空港行きが安い」と言う理由からゴールデンウィークの登山旅は、北海道に決めた。道央(どうおう)の大雪山(だいせつざん)を調べていくうちに旭岳(あさひだけ)・トムラウシ山をつなぐ縦走路に惹かれ、提案するも日程が合わず断念する。縦走するには移動を含めて最低でも3泊4日は必要だった。今回はステップアップとして、ピッケルが必要な残雪登山に行こうと目標を掲げていた。東北の山や南アルプス、中央アルプスなど残雪登山の代替案を検討してみたが、すでに「北海道の口」になっていてどうもしっくり来ない。皆の日にちが合う2泊3日で、踏破可能な北海道の山。それならば、兼ねてから計画のあった利尻山はどうだろうか。4年前の2020年の夏、利尻島行きの計画は新型コロナウイルスによる自粛の影響で羽田・稚内直行便は欠便を余儀なくされ、宙ぶらりんになったままだ。利尻富士町(りしりふじちょう)観光課へ問い合わせたところ、4月下旬の利尻山には「アイゼン・ピッケルが不可欠です」と解答を頂いた。日本最北端の百名山「利尻山」へ向かう事にした。

フェリーは1等、2等、2等自由席に分かれている。1番安い2等自由席は約3000円で当日券のみの販売なのだが、連休中にも関わらず船内はガラガラだった。談笑したり、休んだりと1時間ほど過ごした後、外が気になりデッキへ上がる。帽子が吹き飛びそうな強い風が吹いていて寒くてダウンを着込む。気温は関東が20度前後に対して、利尻島は約10度。寒暖差に加えてこの風は効く。進行方向左、2階デッキから前方を覗き込むと曇り空の遠くにピラミッドのような姿が水平線に浮かんでいて、他に陸らしきは何もない。「利尻山」だ。正確には「利尻島」なのだが、海上から眺めると、まだまだ距離が離れているせいか、島全体が山体となって存在感が強く見える。麓(ふもと)から見上げるよりも現実味が無くて眺めているとワクワクした。行きは船での上陸にして正解だった。


フェリーは1等、2等、2等自由席に分かれている。1番安い2等自由席は約3000円で当日券のみの販売なのだが、連休中にも関わらず船内はガラガラだった。談笑したり、休んだりと1時間ほど過ごした後、外が気になりデッキへ上がる。帽子が吹き飛びそうな強い風が吹いていて寒くてダウンを着込む。気温は関東が20度前後に対して、利尻島は約10度。寒暖差に加えてこの風は効く。進行方向左、2階デッキから前方を覗き込むと曇り空の遠くにピラミッドのような姿が水平線に浮かんでいて、他に陸らしきは何もない。「利尻山」だ。正確には「利尻島」なのだが、海上から眺めると、まだまだ距離が離れているせいか、島全体が山体となって存在感が強く見える。麓(ふもと)から見上げるよりも現実味が無くて眺めているとワクワクした。行きは船での上陸にして正解だった。


午後15時35分、利尻富士町の鴛泊港(おしどまりこう)に辿り着いた。これから2日間お世話になるゲストハウス「利尻ぐりーんひるinn」のスタッフが親切に送迎に来てくれた。先に初老の男性2人組がザックの他、スキー板を送迎車へ納めるのに苦労している所で、軽く挨拶をかわすと、我々を含む2組を乗せた送迎車は宿に向かった。


午後15時35分、利尻富士町の鴛泊港(おしどまりこう)に辿り着いた。これから2日間お世話になるゲストハウス「利尻ぐりーんひるinn」のスタッフが親切に送迎に来てくれた。先に初老の男性2人組がザックの他、スキー板を送迎車へ納めるのに苦労している所で、軽く挨拶をかわすと、我々を含む2組を乗せた送迎車は宿に向かった。
1日目の行程
羽田空港→稚内空港→フェリーターミナル→鴛泊港→ぐりーんひる
1日目の行程
羽田空港→稚内空港→フェリーターミナル→鴛泊港→ぐりーんひる


利尻島には利尻富士町に属する鴛泊港と利尻町に属する沓形港(くつがたこう)の2つのフェリーターミナルが存在していて、それぞれ鴛泊コースと沓形コースから共に利尻山へアプローチが可能である。(※登り・下りで分けて利用する事が多い)また、鴛泊港から沓形港までを道道105号が、沓形港から鴛泊港までを道道108号が島廻りに続く事で、利尻島の周囲約60Kmを一筆に繋いでいる。道道105号を反時計回りに10分進むとぐりーんひるに着いた。昭和60年に開業したこの宿は、現在セルフキッチン付きのゲストハウスとして営業している。用意して頂いた個室「オリオン」は2段ベットが4台の8人用室で、中央にテーブルが配置されたシンプルな設えだ。贅沢にも1人づつ2段ベットを占領して、窓から海を眺めながら一息ついた。海面は穏やかだが風がピューピュー吹いている。宿のスタッフに聞いたところ、利尻島は「海上の島」という特性から常に風速10m/s程度の風が吹くという。(※風速10m/sは強風警報の目安となる数値)今日、たまたま風が強い訳では無かったのだ。



利尻島には利尻富士町に属する鴛泊港と利尻町に属する沓形港(くつがたこう)の2つのフェリーターミナルが存在していて、それぞれ鴛泊コースと沓形コースから共に利尻山へアプローチが可能である。(※登り・下りで分けて利用する事が多い)また、鴛泊港から沓形港までを道道105号が、沓形港から鴛泊港までを道道108号が島廻りに続く事で、利尻島の周囲約60Kmを一筆に繋いでいる。

道道105号を反時計回りに10分進むとぐりーんひるに着いた。昭和60年に開業したこの宿は、現在セルフキッチン付きのゲストハウスとして営業している。用意して頂いた個室「オリオン」は2段ベットが4台の8人用室で、中央にテーブルが配置されたシンプルな設えだ。贅沢にも1人づつ2段ベットを占領して、窓から海を眺めながら一息ついた。海面は穏やかだが風がピューピュー吹いている。宿のスタッフに聞いたところ、利尻島は「海上の島」という特性から常に風速10m/s程度の風が吹くという。(※風速10m/sは強風警報の目安となる数値)今日、たまたま風が強い訳では無かったのだ。




宿から徒歩3分のスーパーマーケットで明日の食料を物色したあと、夕日ヶ丘展望台(ゆうひがおかてんぼうだい)で改めて利尻山を皆で確認した。船で見た時よりも現実的で低く感じたが「明日登る」と思うと、雪の残り具合と強風が未知数で不安な気持ちになった。忘れ物はないか、防寒着は十分か。とあれこれ余計なことを考えてザックをひっくり返す。案の定、水筒とコーヒーを飲むコップを忘れてしまい何とか代用品を調達する。夜は地元住民が集まる居酒屋「力丸」で乾杯した。利尻山踏破の前祝で酒も進み、楽しいひとときだった。23時頃、明日に備えて就寝した。
宿から徒歩3分のスーパーマーケットで明日の食料を物色したあと、夕日ヶ丘展望台(ゆうひがおかてんぼうだい)で改めて利尻山を皆で確認した。船で見た時よりも現実的で低く感じたが「明日登る」と思うと、雪の残り具合と強風が未知数で不安な気持ちになった。忘れ物はないか、防寒着は十分か。とあれこれ余計なことを考えてザックをひっくり返す。案の定、水筒とコーヒーを飲むコップを忘れてしまい何とか代用品を調達する。夜は地元住民が集まる居酒屋「力丸」で乾杯した。利尻山踏破の前祝で酒も進み、楽しいひとときだった。23時頃、明日に備えて就寝した。


2nd day(4/28)
ベットは快適でよく眠れた。支度を済ませダイニングで朝ごはんを食べた後、午前5時頃、送迎車で鴛泊コース登山口へ向かう。昨日出会った初老の男性2人も同乗した。(※以降「先輩方」と呼ばせてもらう)札幌から来たそうで登山の他、バックカントリーや登攀(とうはん)なども楽しむ大先輩だった。利尻島は何度も来ているそうで、早速「キミら、どっから来たの。普段、どこ登ってるの」と色々聞かれた。いきなりでびびってしまい「去年は剱岳に登りました」と見栄をハッテシマッタ…。登山口に併設された利尻山北麓野営場(りしりざんほくろくやえいじょう)は5月1日からの営業で、人の気配は無く、曇り空がさみしく感じる。利尻島はバックカントリーの時期から、春のアウトドアシーズンへ変わろうとしていた。


ベットは快適でよく眠れた。支度を済ませダイニングで朝ごはんを食べた後、午前5時頃、送迎車で鴛泊コース登山口へ向かう。昨日出会った初老の男性2人も同乗した。(※以降「先輩方」と呼ばせてもらう)札幌から来たそうで登山の他、バックカントリーや登攀(とうはん)なども楽しむ大先輩だった。利尻島は何度も来ているそうで、早速「キミら、どっから来たの。普段、どこ登ってるの」と色々聞かれた。いきなりでびびってしまい「去年は剱岳に登りました」と見栄をハッテシマッタ…。登山口に併設された利尻山北麓野営場(りしりざんほくろくやえいじょう)は5月1日からの営業で、人の気配は無く、曇り空がさみしく感じる。利尻島はバックカントリーの時期から、春のアウトドアシーズンへ変わろうとしていた。


2日目の行程(登り)
ぐりーんひる→鴛泊登山口→第一見晴台→長官山→避難小屋→山頂
2日目の行程(登り)
ぐりーんひる→鴛泊登山口→第一見晴台→長官山→避難小屋→山頂


今日は利尻山山頂へ登頂後、その日のうちにピストンでこの鴛泊登山口へ戻ってくる計画だ。午前5時30分頃、登山口を出発する。整備された遊歩道を進むと野営場管理の方から「今日は必ず天気が良くなるから」と声をかけられた。甘露泉(かんろせん)の水場を通り抜け、3合目(※利尻山の登山道は正確には海抜0mから始まる)のポン山分岐を超えると、エゾ松・トド松が生い茂る針葉樹林に包まれた雪が残る登山道を進む。10㎝程度の残雪で、踏めばザクっと重みで沈む。4号目を進み、笹藪(ささやぶ)のトンネルを通り抜ける。登山道は徐々に高度を上げて行くと、だいぶ体が暖まってきて上着を脱いだ。樹林に包まれていて、風は感じない。

今日は利尻山山頂へ登頂後、その日のうちにピストンでこの鴛泊登山口へ戻ってくる計画だ。午前5時30分頃、登山口を出発する。整備された遊歩道を進むと野営場管理の方から「今日は必ず天気が良くなるから」と声をかけられた。甘露泉(かんろせん)の水場を通り抜け、3合目(※利尻山の登山道は正確には海抜0mから始まる)のポン山分岐を超えると、エゾ松・トド松が生い茂る針葉樹林に包まれた雪が残る登山道を進む。10㎝程度の残雪で、踏めばザクっと重みで沈む。4号目を進み、笹藪(ささやぶ)のトンネルを通り抜ける。登山道は徐々に高度を上げて行くと、だいぶ体が暖まってきて上着を脱いだ。樹林に包まれていて、風は感じない。








尾根状に開かれて雪のトレースを頼りに傾斜を進む。なんだか雪山らしくて良い気分になっていると、いつの間にかダケカンバの森にぶつかって登山道を見失ってしまう。雪に誘われてコース外を進んでしまったようだ。なんとか5合目・雷鳥の道標(らいちょうのみちしるべ)を見つけルートに戻るが、雪に覆われた登山道に加えてこの「ダケカンバ」だ。雪と風で横殴りになった幹や枝が行く手をはばみ、どこに行っても道筋が分からない。行ったり来たりを繰り返しながら、焦らずに幹を乗り越え、枝をかいくぐる。6合目・第一見晴台に辿り着いた。


尾根状に開かれて雪のトレースを頼りに傾斜を進む。なんだか雪山らしくて良い気分になっていると、いつの間にかダケカンバの森にぶつかって登山道を見失ってしまう。雪に誘われてコース外を進んでしまったようだ。なんとか5合目・雷鳥の道標(らいちょうのみちしるべ)を見つけルートに戻るが、雪に覆われた登山道に加えてこの「ダケカンバ」だ。雪と風で横殴りになった幹や枝が行く手をはばみ、どこに行っても道筋が分からない。行ったり来たりを繰り返しながら、焦らずに幹を乗り越え、枝をかいくぐる。6合目・第一見晴台に辿り着いた。





6合目は見晴らしがよく、強風に煽られたハイマツが踊るようにボヨンボヨンと揺れている。鴛泊港や市街地、利尻山の子山でトレッキングコースの「鴛泊ポン山」が確認できた。ポンとはアイヌ語で「小さい」と表し、利尻島内にはいくつもポンとつく山が存在する。「先輩方」のほか、単独で登っている30代の女性が休んでいて、我々と入れ替わるように出発して行く。ここまですれ違った登山者は他に1組だけで、今日登っている人達はかなり少ない。避難小屋まで約1時間30分ほど。まだまだ先が長いので、しっかり休んで出発した。

6合目は見晴らしがよく、強風に煽られたハイマツが踊るようにボヨンボヨンと揺れている。鴛泊港や市街地、利尻山の子山でトレッキングコースの「鴛泊ポン山」が確認できた。ポンとはアイヌ語で「小さい」と表し、利尻島内にはいくつもポンとつく山が存在する。「先輩方」のほか、単独で登っている30代の女性が休んでいて、我々と入れ替わるように出発して行く。ここまですれ違った登山者は他に1組だけで、今日登っている人達はかなり少ない。避難小屋まで約1時間30分ほど。まだまだ先が長いので、しっかり休んで出発した。



七曲(ななまがり)と呼ばれるジグザグルートを進む。ダケカンバとの格闘が続き7合目・胸突き八丁(むなつきはっちょう)に着いた。登山道に積もった雪はもろい障害物に変わり、脚をかけては崩れ、膝の辺りまで踏み抜くようになる。岩場の露出した森林限界の尾根を進み、第二見晴台に着いたのはいいが、雨が降ったかと思うとすぐに雪に変わった。強風に雪が合わさると、いよいよ「雪山感」が強くなる。寒い。地図だと避難小屋まであと数十分程度で、だいぶ近づいてきているが、何か口にしないとガス欠になりそうで気も焦る。尾根筋がハッキリしてきた登山道の右側には緩やかな雪とハイマツのゼブラ柄の谷が伸びていて、下から一気に霧(キリ)が立ち込める。


七曲(ななまがり)と呼ばれるジグザグルートを進む。ダケカンバとの格闘が続き7合目・胸突き八丁(むなつきはっちょう)に着いた。登山道に積もった雪はもろい障害物に変わり、脚をかけては崩れ、膝の辺りまで踏み抜くようになる。岩場の露出した森林限界の尾根を進み、第二見晴台に着いたのはいいが、雨が降ったかと思うとすぐに雪に変わった。強風に雪が合わさると、いよいよ「雪山感」が強くなる。寒い。地図だと避難小屋まであと数十分程度で、だいぶ近づいてきているが、何か口にしないとガス欠になりそうで気も焦る。尾根筋がハッキリしてきた登山道の右側には緩やかな雪とハイマツのゼブラ柄の谷が伸びていて、下から一気に霧(キリ)が立ち込める。




8合目の長官山(ちょうかんざん)に着いた頃には、ほとんど目先の視界程度しか見えなくなる。晴れていれば、この場所で利尻山の山頂と対面するはずだった。6合目ですれ違った女性が引き返してきた。悔しくも装備が足りず今回は「諦める」そうだ。お互い「気をつけて」と言葉をかわし見送った。雪の尾根を進むが、視界が悪く尾根の幅員が分からない。左側は傾斜していて危ない気がしたので、なるべく右側のハイマツに沿って前に進む。かなり雪が残っていて、足の付け根まで踏み抜くと体制を取り戻すだけで体力を消耗する。やれやれだ。方向も定かではないが「皆」ここを通ったはずだ。とにかくトレースを信じて進むと午前10時頃、なんとか避難小屋に辿り着いた。

8合目の長官山(ちょうかんざん)に着いた頃には、ほとんど目先の視界程度しか見えなくなる。晴れていれば、この場所で利尻山の山頂と対面するはずだった。6合目ですれ違った女性が引き返してきた。悔しくも装備が足りず今回は「諦める」そうだ。お互い「気をつけて」と言葉をかわし見送った。雪の尾根を進むが、視界が悪く尾根の幅員が分からない。左側は傾斜していて危ない気がしたので、なるべく右側のハイマツに沿って前に進む。かなり雪が残っていて、足の付け根まで踏み抜くと体制を取り戻すだけで体力を消耗する。やれやれだ。方向も定かではないが「皆」ここを通ったはずだ。とにかくトレースを信じて進むと午前10時頃、なんとか避難小屋に辿り着いた。





利尻山避難小屋は木造平屋建て、30人が収容できる無人小屋だ。引き戸を引くと内部は蚕棚(かいこだな)の就寝スペースと休憩スペースに半分づつ分かれていて、明かり取りの窓が2つ。ベニヤ板の内装に鉄骨梁(てっこつばり)が剥き出しの簡素な作りだ。防寒着を着て、早速お湯を沸かしてカップ麺を啜(すす)ると暖かくて生き返る。かじかんだ手で冷たいゆで卵の殻を剥くのは億劫(おっくう)だが、贅沢に2個カレーヌードルに放り込んだ。実は天気予報で午後から晴れることは知っていた。それよりも窓の外は強風と雪が続いていて、こんな雪山体験が出来るとは思ってもみなかった。仮に天候の回復が見込めなくても、来た道を戻る分には危険な箇所は無い。今日の為に道具を揃えて遠路はるばるやってきたのだ。「行ける所まで行ってみよう」と皆で決めた。それぞれアイゼン・ピッケルを装備して午前11時頃、避難小屋を出発した。


利尻山避難小屋は木造平屋建て、30人が収容できる無人小屋だ。引き戸を引くと内部は蚕棚(かいこだな)の就寝スペースと休憩スペースに半分づつ分かれていて、明かり取りの窓が2つ。ベニヤ板の内装に鉄骨梁(てっこつばり)が剥き出しの簡素な作りだ。防寒着を着て、早速お湯を沸かしてカップ麺を啜(すす)ると暖かくて生き返る。かじかんだ手で冷たいゆで卵の殻を剥くのは億劫(おっくう)だが、贅沢に2個カレーヌードルに放り込んだ。実は天気予報で午後から晴れることは知っていた。それよりも窓の外は強風と雪が続いていて、こんな雪山体験が出来るとは思ってもみなかった。仮に天候の回復が見込めなくても、来た道を戻る分には危険な箇所は無い。今日の為に道具を揃えて遠路はるばるやってきたのだ。「行ける所まで行ってみよう」と皆で決めた。それぞれアイゼン・ピッケルを装備して午前11時頃、避難小屋を出発した。



視界の回復がないまま、斜面を進む。ピッケルは根本まで突き刺さるので完全には固まってはいないが、雪の表面は固く、アイゼンを効かせながら進めた。利尻山は独立峰である以上、とにかく登って行けば山頂に近づくことになる。この方向で合っているのか心配になり地図を眺めていると、モヤの中から誰か下山してきた。「先輩方」だ。さすがの鮮やかさに驚いたが、話を聞くと「9合目」で折り返してきたそうだ。「雪山は登った道こそが登山道。このまま真っ直ぐ進めばいい。それより、ここから先は爆風だよ。頑張ってね」と、バトンを渡して2人はさっそうとモヤのなかを行ってしまった。


視界の回復がないまま、斜面を進む。ピッケルは根本まで突き刺さるので完全には固まってはいないが、雪の表面は固く、アイゼンを効かせながら進めた。利尻山は独立峰である以上、とにかく登って行けば山頂に近づくことになる。この方向で合っているのか心配になり地図を眺めていると、モヤの中から誰か下山してきた。「先輩方」だ。さすがの鮮やかさに驚いたが、話を聞くと「9合目」で折り返してきたそうだ。「雪山は登った道こそが登山道。このまま真っ直ぐ進めばいい。それより、ここから先は爆風だよ。頑張ってね」と、バトンを渡して2人はさっそうとモヤのなかを行ってしまった。

斜面を登り切ると、視界は回復して進む方向はハッキリしたが、今度は立っていられないほどの強風が西側から吹き荒れていて、とにかく夢中で進んだ。雪はバチバチとカッパを鳴らし、強風が耳穴の奥まで届いて痛い。雲はものすごい勢いで流れて行くと、空だけが早送りで再生されているような不思議な光景だった。曇り空は更に加速を増して、2・3度青空が見えたかと思うと一気に晴れ渡り、太陽が利尻山を照らした。9合目に辿り着くと、鋭利に尖る利尻の峰が晴天の空を指していて、この日初めて山頂と対面することが出来た。


斜面を登り切ると、視界は回復して進む方向はハッキリしたが、今度は立っていられないほどの強風が西側から吹き荒れていて、とにかく夢中で進んだ。雪はバチバチとカッパを鳴らし、強風が耳穴の奥まで届いて痛い。雲はものすごい勢いで流れて行くと、空だけが早送りで再生されているような不思議な光景だった。曇り空は更に加速を増して、2・3度青空が見えたかと思うと一気に晴れ渡り、太陽が利尻山を照らした。9合目に辿り着くと、鋭利に尖る利尻の峰が晴天の空を指していて、この日初めて山頂と対面することが出来た。







9合目から先は利尻山のシルエットでも尖った先の部分、火山性のスコリア(軽石)で形成された急な斜面の上りとなる。強風が吹き荒れる中、念願叶いアイゼンとピッケルで硬い雪を登っていくが、深い踏み抜きを食らってしまうこともある。海と雪のコントラストがキツく照り返しで目がチカチカした。沓形コースの分岐(ぶんき)を通り過ぎ、ここから先は細い雪稜(せつりょう)が続いていて、稜線(りょうせん)を境に西側は切れ落ちていて近寄り辛く、かといって東側は多雪で、転べはどこまでも堕ちていきそうなこの急斜面は、素人目にも「何か」起きそうな危険な気がした。なるべく稜線にそって慎重に登る。山頂手前、最後の登山道は手足に堪(こた)えたが登り切った先には、そびえ立つ巨大な「ローソク岩」と「北峰」が細長いリッジの先に続いていて圧巻だった。午後13時頃、山頂にたどり着いた。

9合目から先は利尻山のシルエットでも尖った先の部分、火山性のスコリア(軽石)で形成された急な斜面の上りとなる。強風が吹き荒れる中、念願叶いアイゼンとピッケルで硬い雪を登っていくが、深い踏み抜きを食らってしまうこともある。海と雪のコントラストがキツく照り返しで目がチカチカした。沓形コースの分岐(ぶんき)を通り過ぎ、ここから先は細い雪稜(せつりょう)が続いていて、稜線(りょうせん)を境に西側は切れ落ちていて近寄り辛く、かといって東側は多雪で、転べはどこまでも堕ちていきそうなこの急斜面は、素人目にも「何か」起きそうな危険な気がした。なるべく稜線にそって慎重に登る。山頂手前、最後の登山道は手足に堪(こた)えたが登り切った先には、そびえ立つ巨大な「ローソク岩」と「北峰」が細長いリッジの先に続いていて圧巻だった。午後13時頃、山頂にたどり着いた。





利尻山の最高点は南峰(1721m)だが、侵食が激しく現在は立入禁止で祠(ほこら)の立つ北峰(1719m)を山頂としている。プロペラが祀ってあるのは、航海の安全や大漁を祈願する漁師たちの「信仰の山」としての名残りだ。ザックを置いて一息ついた。麓を眺めると円錐型(えんすいがた)に広がっていて「島であり山」だとよく分かる。海から吹きつける雨風は山頂付近の火山体を削り取り、北峰、南峰、ローソク岩など硬い岩脈(がんみゃく※火山体の割れ目に貫入したマグマが固まったもの)だけが露出した。青い海に礼文島が浮かび、彼方にはサハリンの地が確認できた。景色には比較する対象が無く、360°海に囲まれていて、今我々が立っている「頂き」だけが存在する。利尻山は「孤高」の山だった。


利尻山の最高点は南峰(1721m)だが、侵食が激しく現在は立入禁止で祠(ほこら)の立つ北峰(1719m)を山頂としている。プロペラが祀ってあるのは、航海の安全や大漁を祈願する漁師たちの「信仰の山」としての名残りだ。ザックを置いて一息ついた。麓を眺めると円錐型(えんすいがた)に広がっていて「島であり山」だとよく分かる。海から吹きつける雨風は山頂付近の火山体を削り取り、北峰、南峰、ローソク岩など硬い岩脈(がんみゃく※火山体の割れ目に貫入したマグマが固まったもの)だけが露出した。青い海に礼文島が浮かび、彼方にはサハリンの地が確認できた。景色には比較する対象が無く、360°海に囲まれていて、今我々が立っている「頂き」だけが存在する。利尻山は「孤高」の山だった。




2日目の行程(下り)
山頂→避難小屋→長官山→第一見晴台→鴛泊登山口
2日目の行程(下り)
山頂→避難小屋→長官山→第一見晴台→鴛泊登山口


これから鴛泊登山口まで戻る事になる。悪天候の中、勢いで山頂まで来たのはいいが、いざ登って来た分を同じく下るのは、道のりが長いのが分かっていて、日のある内に下山できるか心配になってきた。すると山頂まで着いて気が緩んでしまったのか、20mほど歩いた所で平原さんがうずくまり身動きが取れなくなってしまう。さっきまで素晴らしかった麓の景色が、今度は果てしなく遠くて、なんだか目眩(めまい)がしてきた。チョコレートを食べて気持ちを持ち直すと「とにかく避難小屋まで戻りましょう」とハッパをかけた。雪稜の登山道は下りの方が急勾配に感じてしまい斜面に吸い込まれないように、尻もちを付いたまま雪をズリズリと下る。

これから鴛泊登山口まで戻る事になる。悪天候の中、勢いで山頂まで来たのはいいが、いざ登って来た分を同じく下るのは、道のりが長いのが分かっていて、日のある内に下山できるか心配になってきた。すると山頂まで着いて気が緩んでしまったのか、20mほど歩いた所で平原さんがうずくまり身動きが取れなくなってしまう。さっきまで素晴らしかった麓の景色が、今度は果てしなく遠くて、なんだか目眩(めまい)がしてきた。チョコレートを食べて気持ちを持ち直すと「とにかく避難小屋まで戻りましょう」とハッパをかけた。雪稜の登山道は下りの方が急勾配に感じてしまい斜面に吸い込まれないように、尻もちを付いたまま雪をズリズリと下る。
9合目を通り過ぎる。天気が回復したせいか、風もだいぶ弱まってきた。午後の日差しが温かくて気持ち良い。もう登りの時の緊張感は無くて、まるで別の山のようだ。登りでは気づかなかったが、この辺りは特に登山道の劣化が激しく、コルゲート管に流出したスコリアを敷き詰めて土留めを作り、自然のまま補修している。利尻山はほんの数年前まで、脆く崩れやすい登山道の侵食が深刻になっていて、登っては崩れる「3歩進んで2歩下がる」山だと言われていた。保全活動は今も続いていて、利尻山に登れる事を感謝したい。
9合目を通り過ぎる。天気が回復したせいか、風もだいぶ弱まってきた。午後の日差しが温かくて気持ち良い。もう登りの時の緊張感は無くて、まるで別の山のようだ。登りでは気づかなかったが、この辺りは特に登山道の劣化が激しく、コルゲート管に流出したスコリアを敷き詰めて土留めを作り、自然のまま補修している。利尻山はほんの数年前まで、脆く崩れやすい登山道の侵食が深刻になっていて、登っては崩れる「3歩進んで2歩下がる」山だと言われていた。保全活動は今も続いていて、利尻山に登れる事を感謝したい。







海を眺めながら雪の斜面を下って行くと、避難小屋に帰って来た。登山者が1組陣取っているところで、今日は小屋で一泊して明日山頂へ向かうらしい。ここから登山口まで約2時間30分ほど。持ち水も残り少なくなってきたが、登山口まで水場はない。パンとコーヒーで体力を回復した後、午後15時30分頃、下山を再開する。登りでは山頂と初対面するはずだった8合目の長官山に着いて、登山道を振り返ると、真っ白な雪の尾根が広がり、山頂とこれまで降ってきた軌跡が確認できた。アイゼン・ピッケルを仕舞う。順調に下るも、最後まで残雪に足を取られながらの登山道だった。夕日が沈み、ヘッドライトを頼りに樹林帯を進むと午後19時頃、無事鴛泊登山口に辿り着いた。約13時間に及ぶ、長い道のりだった。




海を眺めながら雪の斜面を下って行くと避難小屋に帰って来た。登山者が1組陣取っているところで、今日は小屋で一泊して明日山頂へ向かうらしい。ここから登山口まで約2時間30分ほど。持ち水も残り少なくなってきたが、登山口まで水場はない。パンとコーヒーで体力を回復した後、午後15時30分頃、下山を再開する。登りでは山頂と初対面するはずだった8合目の長官山に着いて、登山道を振り返ると、真っ白な雪の尾根が広がり、山頂とこれまで降ってきた軌跡が確認できた。アイゼン・ピッケルを仕舞う。順調に下るも、最後まで残雪に足を取られながらの登山道だった。夕日が沈み、ヘッドライトを頼りに樹林帯を進むと午後19時頃、無事鴛泊登山口に辿り着いた。約13時間に及ぶ、長い道のりだった。











3rd day(4/29)



最終日の朝。利尻島は晴天で、今日は風も珍しく穏やかだ。昨日は、ダイニングを貸し切ってジンギスカンとビールで盛り上がった。今回の利尻山は天気の悪さと利尻の風が登山道を険しくしたが、その分忘れられない残雪の登山旅になったと思う。それから宿には空港まで送迎して頂き、最後までお世話になった。実はぐりーんひるで我々は「利尻の鉄人」宣言を表明した。鉄人の条件は2つ。「利尻山踏破」と「利尻島一周」である。宣言したからにはいつか挑戦したい。日本航空のプロペラ機は利尻空港から札幌の丘珠空港(おかだまくうこう)へ離陸を開始すると、上昇・旋回して進路を整える。進行方向右側の窓席から、残雪の利尻山を見納めた。

最終日の朝。利尻島は晴天で、今日は風も珍しく穏やかだ。昨日は、ダイニングを貸し切ってジンギスカンとビールで盛り上がった。今回の利尻山は天気の悪さと利尻の風が登山道を険しくしたが、その分忘れられない残雪の登山旅になったと思う。それから宿には空港まで送迎して頂き、最後までお世話になった。実はぐりーんひるで我々は「利尻の鉄人」宣言を表明した。鉄人の条件は2つ。「利尻山踏破」と「利尻島一周」である。宣言したからにはいつか挑戦したい。日本航空のプロペラ機は利尻空港から札幌の丘珠空港(おかだまくうこう)へ離陸を開始すると、上昇・旋回して進路を整える。進行方向右側の窓席から、残雪の利尻山を見納めた。

